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同僚に差をつけよう!今流行っている「デザイン思考」の全体像まとめ

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最近流行りのデザイン思考。 

 

いろんなビジネス系の雑誌をみていてもよく目をするようになってきました。デザイン思考の考え方を会社の研修に組み込むところも多いようです。

 

僕も専門外にはなりますが気になったので、まとめてみました!(主観が入っていますのでご注意ください)

 

 

そもそも「デザイン」って…

まずデザインっていうのは多義語ですね。

そして、我々日本人が一般にイメージする「デザイン」と欧米企業(特に事業化実施段階)およびデザイン思考における「デザイン(design)」は微妙に意味が違うようです。

 

①言語本来の意味としてのdesign

「de(否定)」+「sign(記号)」。記号(概念など)に形を付加すること。またはそのプロセス。(つまり設計)

 

②日本での一般的なデザイン

色や形を製品に付与すること。

 

欧米企業、「デザイン思考」の文脈での「design」

人間のニーズに目を向け、その解決として商品やサービスを開発すること。

 

(以上、参考文献①をもとに若干加筆)

 

これをみてみると、日本人のイメージする色や形の付与という「デザイン」の概念を超えて、デザイン思考における「デザイン」は問題解決やそのためのサービス開発を指すということです。

 

デザイン思考とは

デザイン思考の定義

IDEOという世界的なデザイン会社のCEOのTim Brownによると、デザイン思考は、

「デザイナーの感性と手法を用いて、人々のニーズと技術の力を取り持つ」領域を専門とし、「実行可能なビジネス戦略にデザイナーの感性と手法を用いて、顧客価値と市場機会の創出を図る」もの

 らしいです。

 

つまり、顧客を中心に製品・サービスを開発するためのプロセスのひとつにということでしょうか。上述した「デザイン(design)」の意味に近いですね。

 

デザイン思考を流行らせるきっかけとなった機関

次に、デザイン思考を世界に浸透させた立役者(?)を紹介します。

 

①IDEO

  • カリフォルニア州に本拠を置くデザインコンサルタント会社
  • CEO:Tim Brown
  • 従業員600名。工学系、人文系、デザイン系など多様な人材を雇用
  • コンサルタントポジションは人気が高く倍率1万倍を超えることも
  • 問題解決手法である「デザイン思考」を2008年ごろ提唱
  • Apple,MS,P&G,ペプシ,サムスンなど幅広い顧客 

 

②d-school

  • 2004年にハーバード大に創設。
  • 「design」を学びながら、
    イノベーションを起こしていく力を身に着ける学科横断プログラム。
  • 実際の社会課題を解決する。
  • サポート企業はgoogleやTeach for Americaなど多数。

 

主要なのはこの2つだと思います。それぞれで提唱している「デザイン思考」のプロセスも若干違います。最近ではd-schoolを参考に東大にもi-schoolというのが設立されております。

 

デザイン思考が必要な2つの背景

理由①顧客の潜在ニーズに注目する

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(参考文献①より著者作成)

 

典型的な大手企業は新規事業のGOサインを出す際に、重視するのが

①市場規模

②自社の強みがいかせるか

 の2点ではないのかなと思います(あと利益が出るかどうか)。しかし、「市場規模が大きくなる」と推測できる時点で、後発になってしまっているというジレンマを抱えており、また自社リソースにこだわるあまり、視野がせまくなったりサービスの上市が遅れる可能性もあります。(以下の記事に詳しく書いてあります。)

www.kokoro-no-compass7.com

 

そうではなくて、本当に新規事業を作り出そうと思ったら、お客さんすらまだ言語化できていないニーズに着目しサービスをだすしかない。

これがデザイン思考が必要となる1つ目の理由だと思います。

 

理由②商品・サービス価値が顧客に近い部分に移っている

 いままでは、ビジネスモデル(どうやって利益を出すか)が優れている企業や、バリューチェーンが優れている企業、高スペックの製品を持っている企業が競争に勝利してきていたと思います。しかし、多くの製品がコモディティ化し、これからの時代は、製品だけでなくそれに付加するサービス、製品・サービスのUI、顧客のエンゲージメントがより価値をもってくるようになってきていますね。

これが2つ目の理由です。

 

 

デザイン思考のステップ

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(参考文献①②を元に筆者編集作成)

 

図を見てもらればわかると思いますが、デザイン思考は
①Discover ②Define ③Ideate ④prototypeの4ステップから成ります。

各ステップでどんなことをやるのかの詳細は後述しますが、デザイン思考は、簡単に言うと顧客のニーズを深堀し、どこの問題を解決するか決め、発想し、実際に作ってみてフィードバックをもらうというサイクルを回すことです。

そして、おおまかに人間観察、つまりエスノグラフィーの領域とモノやサービスをとりあえず作ってみて顧客からフィードバックをもらうプロトタイピングの領域があります。

 

デザイン思考の各ステップ詳細

①Discover(発見)

Discoverフェーズでの目的は、観察と共感を通して、インサイト(洞察)を得ることです。

ちなみに

・共感とは顧客の大切にしている価値観を理解すること

・インサイトは、顧客になりきってわかる心の動き、つまり(意外な)気づき

です。

インサイトっていうのがデザイン思考にはよく出てくるのですが、とてもわかりにくいので少し例をあげます。例えば、引っ越しを希望している友達に詳しくインタビューをしていると、

 

「賃貸を探す際に、友達がお世話になった不動産仲介担当者を使いたい」

 

と言っていました。

家探しはなかなか大変ですが、自分が信頼している友達が「ほんとよかった!」と言っていた不動産仲介の担当者と一緒なら安心して家探しができるのはないでしょうか。不動産仲介業者は選べたとしても担当者までは選べません。僕も担当者レベルでの口コミサービスがあれば、評価が高く、良いコメントがついている人を選ぶかもしれません笑

 

で、このインサイトの鋭さ(良さ)が、今後のアイデアの質に関わってきます。

 

Discoverフェーズでよく使われるツールは、インタビューやユーザー観察、ワークショップに加え、カスタマージャーニーやペルソナの作成などがあります。

ecbible.net

 カスタマージャーニーマップについてはこの記事がわかりやすいです。

 

②Define(定義)

Defineフェーズの目的は問題の切り口を見つけ、商品・サービスのコンセプトを創ることです。どういうことをするのかをTFA(Teach For America)の例で紹介します。TFAは貧困地域への教師の派遣などの活動をしているNPOです。

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(参考文献②より作成)

 

上図の通り、貧困地域では、①経済状況が悪く、②良い教師がいない、③学力水準が高まらないという負のループが起きており、それを、「良い教師がいない」を切り口にして解決を図ったのがTFAです。良い教師がいれば、学力が向上し経済水準があがるという正のループが起きますね。

このレバレッジポイント(切り口)を選ぶ際に、基準となるのが、①有用性②実現可能性③持続可能性です。

Defineフェーズで使われるツールとしては、コンサルタントが使う、仮説思考やロジカルシンキング、C-box、ビジネスモデルキャンバスを中心とした各種フレームワークです。どこが問題解決の切り口になりえるのか、これを考えるのは難しいですね。

www.hivelocity.co.jp

 

③Ideate(発想)

Ideateフェーズはとにかくアイデアを考えることです。

ツールとしてはブレーンストーミングやKJ法、SCAMPER法など、各種アイデア創発のための方法論があります。(興味がある方は調べてみてください)

ウォルトディズニーは事業アイデアを考える際に、まず「子供の部屋」という部屋にこもり、制約なくやりたいことを考え、そのあと実現できるものを選んでいったといいます。このように最初は質ではなく、数をいっぱい出すのが大事ですね。しかも、「これはできそうもないなあ」っていう考えを一旦脇に置いておくのもいいかもしれません。

 

④Prototype(実験・評価)

Prototypeフェーズでは、顧客にアイデアをぶつけ改善していきます。顧客にアイデアをぶつけるためにはアイデアがなんらかの形にビジュアライゼーションされていることが大事です。(モックアップでもコンセプト映像でも、絵でも。)

これを常に仕組みとしてやっている企業にはAirBnBがあげられます。

AirBnBには新入社員がAirbnbをつかって旅行をし、サービスの改善および新サービスを提案するという研修があります。(新入社員も自社サービスを使えば顧客です)

またGoogleは新商品(まだ上市していない)のコンセプト映像をyoutubeなどに出して、製品開発の早いうちから顧客の声を取り込もうとしています。

www.youtube.com

 

ツールとしてはこのようなビデオビジュアライゼーション、製品モックアップのほかに、ユーザビリティ評価(インタビューなど)がありますね。

 

これで4ステップの解説が終わりましたが、さきほども述べた通り、デザイン思考ではステップを行き来したりサイクルをまわしながら製品・サービスを完成させます。

 

任天堂Wiiの例

これまで抽象度が高い話も多く、デザイン思考をいまいち理解できていない方もいると思いますので、最後に任天堂Wiiの開発の経緯をデザイン思考のステップに基づいて、解説したいと思います。(Wii UではなくWiiですよ)

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(写真はwikipedeiaより)

 

Wiiの開発ではまず、社員の家庭の観察を通じ、ゲーム機があることで子どもと親の関係が悪化している、ゲーム機があるとリビングでの子どもの滞在時間が短いといった状況が確認された。同時に、鍋を囲んでいる家庭は親密度が高いことなどが明らかになっていった。

 (参考文献⑤よりhttp://www.buildinsider.net/enterprise/designthinking/03

 

このような背景があり、「家族みんなで楽しめるゲームを作りたい」という思いで開発をはじめたといいます。

 

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(参考文献⑤より著者作成)

 

そして上図のようにまず、

①Discoverフェーズで「テレビは家族で楽しく囲んでいる」というインサイトを発見しました。

②Defineフェーズでは、コントローラを切り口とすること、家族みんなで楽しめるよう動きがあるゲームにすることが定義されています。

③Ideateフェーズではテレビのリモコンに近いコントローラの開発、動きのあるゲームを実現する加速度センサーの実装があげられます。

最後の④Prototypeフェーズですが、wiiのコントローラは1000回以上のPrototypeのすえ完成しました。

 

みなさん、デザイン思考が少しはわかったでしょうか!

 

そもそも、デザイン思考は新しいものではなく、素晴らしいクリエイターやマーケターはずーっとやってきたことで、それが今理論化され流行っているだけみたいですね。

  

まとめてみての感想

まとめてみての僕の感想です。

 

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①イノベーションに失敗はつきもの
デザイン思考はイノベーションを練習するためのひとつの枠組みである!

*多様性が増えるとうまくいかないことも多いが、デザイン思考はそれを許容し、
プロトタイピングによってリスクを軽減する。

 

②既存のプロセスを「経験デザイン」つまり顧客側から設計し直すキッカケとなる。

 

③デザイン思考はビジネス、デザイン、エンジニアリングの交点!

これからは専門性と専門性をつなぎ、新たな価値を出せる人材が必要。

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特に解説したいのは②です。

デザイン思考を一部の人がとりいれても効果は限られています。企業で取り入れる場合、多くの人が一緒にアイデアを考える組織制度、そして失敗を許容しどんどん新しい商品・サービスに挑戦できるような組織風土、賃金評価制度が必要になります。また経営陣が理解し、新規事業のgo/no goの基準を変えていかなければなりません。

つまり、経営の取り組みとしてデザイン思考を取り入れていく必要があります。これがなかなか難しいんだろうなあと思いました。

 

以上!デザイン思考の概要でした!

長文お読みいただきありがとうございました。

 

最後に参考文献のっけときますね。

ではでは。

 

参考文献・webサイト

①野村総研 「国際競争力強化のためのデザイン思考を活用した経営実態調査報告書」

②「デザイン思考ポケットガイド」(柏野尊徳著)

③一般社団法人デザイン思考研究所HP(http://designthinking.or.jp/

④D-school, IDEO, Airbnb, AppleのHP

⑤Build Insider 「design thinking入門1-3」(http://www.buildinsider.net/enterprise/designthinking/01)

⑥クーリエジャポン 「これから求められるのはT型ではなくH型の人材」(http://courrier.jp/news/archives/5059?id=breadcrumbs

⑦margus.klaar著 「サービス・デザイン入門」

⑧アネミック・ファン・ブイエン著 「デザイン思考の教科書」

 

(この本は少し難しいけど、デザイン思考とかデザインを勉強したければおすすめです!)